「いつまでも待ってる」作品設定と人形制作裏話
gallery hydrangea(ギャラリー ハイドランジア)8月公募企画展『失くした時代』に出展した作品は、はじめて人形を立体刺繍で作りました。
なんで人形を作ったのかというと、作品に物語性を持たせたかったからです。
やっぱり植物だけで物語性を出すのはわたしの力量では難しく、人形というモチーフを加えてみることにしました。
この人形の年齢は何歳くらいだと思いますか?ちょっと考えてみてくださいね。
作品の写真はこちら
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どうですか?この人形の年齢は何歳くらいだと思いましたか?
この作品のテーマは「ノスタルジー」、そして出展した企画公募展のタイトルは「失われた時間」です。
もちろんこのテーマと企画展タイトルに沿った作品を作りました。
この文章を見たらまた人形の印象が変わるかな。
この作品をSNSで紹介する時につけた文章です。
「いったいどれくらいの時が経ったのかしら。
あなたが来てくれるまで、いつまでも待ってる。」
わたしが考えた人形の設定はかなり年を重ねてしまった女性です。
「あなたはいったいいつ迎えに来てくれるんだろう。
あなたのことを待っているうちに、顔や手に深い皺が刻まれてしまった。
それでもあなたのことをいつまでも待ってる」
こんな設定で作りました。
この女性は少女のころからずっと、ある人を待っています。
その人を待ち続けてかなりの時間が経ってしまいました。
なので髪型や着物は少女のままだけど、顔や手には深い皺が刻まれているというちぐはぐな感じになっています。
この女性はこれからあの人に会えるのだろうか、それとも会うことが叶わないだろうか…。
この女性にとっての失われた時間を表現した作品となっています。
とはいえ、作品の設定というのはなかなかお伝えする機会がないので、作品を見てくださるみなさんに作品の印象はゆだねるしかないのですが、そこがまた作品を制作する上でおもしろいところだなと思っています。
最初にこの人形の年齢について尋ねましたが、わたしが考えた設定と違っていても、もちろんいいんです。
わたしの設定と近いから正解とか、全然違っていたから不正解とかはありません。
それは作品を見て感じてくれたことなので、どれが正解というものはないと思っています。
むしろ作品を見て感じてくれたことすべてが正解だと思います。
だから、作品を見てくれた人の数だけ正解があるというのがわたしの考え方です。
これは作品制作する人によって考え方が違うかもしれません。
だからといって、自分の中での設定はちゃんと作っておかないと作品の軸がぶれてしまうので、設定はしっかり作るようにしています。
特に今回は人物がいる作品なので、いつもよりも細かく設定を作りました。
この作品をメインモチーフとした物語も書けそうなくらい。
立体刺繍作品と物語を合わせて制作するのもおもしろいと思うけれど、もっと時間の余裕ができてからかな。
今、手をつけてしまったら大変なことになってしまうと思うの、絶対。
人形制作は最初なかなか手が進まなくて難儀しましたが、作ってよかったです。
作品の幅が広がったというのもありますが、作っていてとても楽しかったんです。
だんだん作っている人形が愛しく思えてくるんですよ、不思議なことに。
今回、人形に着せた着物も自分で仕立てました。
透け感のある着物を作りたかったので、素材はオーガンジーのリボンを使いました。
着物の反物も幅が狭いので、リボンで作った方が布を裁断して作るもより作りやすいかなと思ったんですが、思った通りでした。
和裁は浴衣を縫ったことがあるくらいの知識しかなかったのですが、いつも着物を着ているのでなんとかなりました。
わからないところは実際の着物を見たりしてね、チクチクと手縫いで作りました。
帯も人形の身長に合わせて長く作り、ちゃんと後ろで帯結びをしています。
髪の毛があって帯結びが全部は見えないけど。
そうそう、足袋も作ったんですよ。
植物がメインモチーフなので昆虫の方が合わせやすいかなとも思うんですが、自分の場合は人物の方がおもしろいかな。
これから人形を組み合わせた作品も増えてくると思います。
しばらくギャラリーへの出展はお休みです。
次回のギャラリー出展は12月。
今は10月のコンクールに向けての制作がはじまっています。
このコンクール出展作品は条件に「未発表作品」とあるので、このメルマガでも詳細をお伝えすることができないのです。
制作過程は大丈夫かなとも思うんですが規定に引っかかってしまったら困るので、どんな作品を作っているのかということは10月のコンクールが終わってからお伝えすることになります。
けっこう大きめの額装作品を作っているということだけお伝えしておきます。
もちろん立体刺繍作品ですよ。